「太白陰経」と六壬、遁甲

半年くらい前に、玄珠さんから「太白陰経」という書に「煙波釣叟賦」よりも古い遁甲についての記述があると聞いた。そしてそれから程なくして、黒門さんからは六壬についての記述もあると聞いた。

奇門遁甲は専門ではないので「へぇ〜」ですむが、六壬となるとそうもいってられないので一応ググッてみたところ、原文が以下にあった。(句読点が滅茶苦茶にふられているので読みづらいが。)

《神機制敵太白陰經》

この〔卷十〕〔雜式〕に〈元女式〉という名前で六壬についての記述がある。

このときは「へぇ〜、ほんとだ」ですましたが、最近研究中の「占事略决」と深い関わりがありそうになって、自分の中では俄然盛り上がってきている。

最近取り寄せた前田尊経閣文庫本の「占事略决」は「四課三伝法第一」で始まっているが、その冒頭は

常以月将、加占時、視日辰陰陽、以立四課。(句読点は引用者)

であるが、「太白陰経」元女式の「推四課法」の冒頭は、

常以月將、加正時、視干日支辰陰陽、以為四課。(句読点は引用者がふり直した)

と、かなり似た記述となっている。

また返吟課についての記述が

反吟、剛干、以干上神為用、柔干、以支上神為用。反吟、剛干、以干衝、柔日、以辰衝為用。以刑及衝用為傳終。(句読点は引用者がふり直した)

となっているのが、小坂先生が復元された陰陽師達が使用していた三伝の中の返吟課の三伝を思わせて興味深いものとなっている。

ひょっとすると「太白陰経」はかなり重要な文献だったのではないだろうか。

付記:村山修一著「日本陰陽道史総説(購入)」(ISBN:4827310572)では、占事略决の記述として、「常以月将加占時」が「常以月将加占特」となっていたが、とりよせた占事略决では書写した安倍泰統の書き癖で「時」が「特」に見えないこともないということが確認できた。泰統は正しく「常以月将加占時」と書いている。